お待たせしました!優柔不断インタビュー、いよいよ後編です。リングの上では「速い!強い!元気!」な米山選手の、真逆なプライベートは優柔不断女子。前編にひきつづき、というより「ここまでか!」と、つっこみたくなるほどの決められないっぷり。この話に結論は出るのか出ないのか?どうぞ最後までお付き合いください。
やりたくないやりたい、っていうのじゃなく
「ああそろそろかな」って気がしたんです。
――ところで20代は夢や仕事などのやりたいことに無我夢中で、楽しいことにも辛いことにもまみれまみれて駆け抜けちゃうんですけど、20代も終わりになると、一旦いろいろやり尽くすというか、そこでハタと人生に迷ったりしませんでしたか?
★わたし18歳で高校卒業してプロレスに入って、いつまでとか特に考えてなかったんですけど、30までには結婚して子供を産んで幸せな家庭を持ってるつもりでいて、でもなんか辞めずに30近くになって、なんか、あの、結婚して子供を産むなら30までがいいのかなあとか、親のこと考えるともう何年も心配させつづけて親孝行しなきゃなとか、世間体を考えてそろそろ結婚しなきゃなとか、思って、ま、なんとなくそろそろ辞めようかなって感じで辞めようと思ってたんです。
――すごい女子っぽいですね。以前に何かの記事で米山選手が引退を考えた理由として「いつまでも続けられない気がする」というのを見かけて、女子っぽさを感じてはいたんですけど。
★なんか、もやっっとしてますよね(苦笑)
――「いつまでも続けられない気がする」っていうのは、20代で女子プロレスを引退している方の中にも結構いたんじゃないかと想像できます。
★怪我がつきものなので、やっぱり辞めてからの今後の人生のほうが長いじゃないですか。だからまあ、元気なうちにとか、動きが落ちる前にとか、もやもやした、これっていう理由じゃなくてなんとなくな理由で辞めようとは思ってたんですけど。
――1つの区切りになる「30歳」という数字はどこから来たんでしょう。
★ねえ、なんですかねぇ。分かんないんですけど、30の前、29歳あたりですごい焦りがあって、もう何に対しても焦りがあって「もう30になっちゃう、あの大台がきてしまう〜」って感じで。そのちょっと前にベルトも失って、アゴを折って、年齢も30歳くらいになって、いろんなことが潮時だなって感じでした。やりたくないやりたい、っていうのじゃなく、「ああそろそろかな」ってタイミングに見えたんですよね。それも、もやーっとしてるんですけど、はは。
――実際、結婚して子供を産んでと焦っていた29歳の時に、強い結婚願望ってありましたか?
★なかったです!
――えええ〜〜〜!!!!
★結婚生活に特に憧れもないし、ま、幸せそうな人見るといいなとは思うんですけど、別に結婚したい人がいたわけでもないし、子供も苦手だし。でもなんか、しなきゃいけないものかな〜って、またそれももや〜っとした感じで。すべてがもや〜っとしたまま決められず準備もせず。たぶんプロレス辞めてたとしても、結婚もしてないし子供もいないと思います。
――もや〜っとしていながら、最後は言い切り??? じゃ、じゃあ、結婚願望がなかったことはひとまず置いておいて、プロレス以外の人生への憧れはあったんですか?
★んんん〜。ないです、なにもないですぅ。
――い、1個もなかったですか??? いやいや、なくてもいいんですいいんです。
★うんー、これっていうのなかったですね。だから引退を決めたときも、辞めたら婚活して知り合いのとこで働こうかな、どこにしようかなぁって。これももや〜〜っと。ほんとだめですよねぇ。はは。
決めなきゃっていうより、あー決めたい!
決めたいっていうより、やりたい!って感じ。
――ところで、自分の優柔不断に気付いてから「優柔不断はなぜそんなに責められるのか」と気になって調べてみたんです。「優柔不断のメリット」「優柔不断の長所」「本当に優柔不断は悪いことなんでしょうか?」という率直な質問も幾つかありました。
★あー、そうなんです。ダメだなぁと分かってはいるんですけど、そんなに悪いことなのかなあと思ってしまうことあります。良く言えば慎重派かなと思うんですけど…。
――評価低いですもんね。調べた中で「優柔不断型」と「直感型」の比較があって、直感型の人は、まず好き嫌いがすごくはっきりしている。「嫌、やらない」など物事を瞬時に判断できる。その時に考える時間をあまりかけない分、後で結果が違っていても後悔や未練がないらしい。それに対して優柔不断型の人は、好き嫌いがあまりない。間口が広い。その分選択肢が広くて悩みが増える。じっくり考えるので短絡的なことはしないけれど、考える時間をかけた分、結果が違ったときに大きく後悔することがある。とありました。
★さっきわたしが言ってたのと同じですね!悩む時間が長いとあとで後悔する時間も長いみたいな。こうやって比べてもらうと、直感型も優柔不断型もどっちがどうとかないような。優柔不断てそんなに悪いことでもないんですかね!でもまあ、その、やっぱり迷惑かけちゃったりするし、うー。
――優柔不断女子にとっては、大きな何かを決めるとき、必要以上の重圧が掛かってしまう気がします。勝手に背負ってるっちゃそうなんですけど。それをどうしたら「決めなきゃ」と思いこまず、いい意味でもっとアバウトになれるのかっていうのは、個人的な課題でもあるんですけど。米山選手は大きな優柔不断の瞬間を経験されて、脱優柔不断を意識するようになって、「物事を決めなきゃいけない」って思う瞬間って減りましたか?
★今、そうですね。決めなきゃっていうより、あー決めたい!さらに決めたいっていうより、やりたい!って感じなんですかね。あれやりたい、これやりたい。で、これも決めたいあれも決めたいって。前はやりたくないけど決めなきゃいけないとか、あんまり乗り気じゃない中での決断だったりして。今はあれもこれも本当に楽しいんです。
短い時間でパッと決めると
ダメージもパッと散っていくんです
――最後に優柔不断な人に「優柔不断で構わないですよ」というメッセージをいただきたいんですけど。
★ハーッ、難しい。えっと、優柔不断て別に悪いことじゃない…と思います。真面目で慎重派なだけなので、優柔不断だからって優柔不断だから何か?くらい、言っちゃいたい。わたしも一部分が前向きの直感型に変わっただけで、今もいっぱい優柔不断なんですけど。面白いこと楽しいことやりたいなと思って、自分がやりたいことはどんどん決められるようになったので、嫌なこととかしたくないことって多いですけど、そういうことをいかに面白がってできるかって切り替えができたらいいかなって。
――いやなこと、やりたくないことって、ねぇ。
★ありますよね。あと究極に迷ったときは一番初めに考えたことを選んでみると変わってくるかもしれないです。優柔不断の人は迷ったら自分の直感を信じて、一番最初に選んだことを試してみてもいいかなと思います。短い時間で決めると最後に後悔する時間も短かくて、パッと決めるとダメージもパッと散っていくんです。最近気づいたんです、これ。
――最近はファンイベントやら自主興行やら、シュッと決めちゃいますよね。むしろ早い!
★優柔不断の反動なんですかね。早すぎるかなと自分でも思います。以前は何かを始める前や何かを頼む前に、まず最悪の事態を想定してたんですよ。これがこうなって、誰さんとかにナントカナントカって言われるなぁ。でも、こう言ってどっちにしてもナントカナントカって言って怒られるかなぁ。だからそう思ってればダメージは最小限に済むから大丈夫、うんうんって。
――準備万端というか、準備しすぎです。
★そうなんです。それだけ想定しておいても「やらなきゃよかった」と後悔するんですよ。今は、ダメもとで大御所の選手の方に試合のオファーをしたりして、ダメだったけど、やってみてよかったってと思うことが増えました。ダメだったかぁ〜と思うんだけど後悔してない。なんか次につながるような気さえするんです。
――まさにダメージがパッと散ってる瞬間!
★以前はすべてを相談してたんです。「どうしよう?」「どうしましょう?」って丸投げで自分の意見がなかったです。なくないんだけど、自信がなくてネガティブな気持ちになって出せなくて。今は「わたしはこう思うんですけど、こっちがいいと思うんですけど、どう思いますか?」って、何を聞くにしても、まず自分で考えてそれで聞いてます。なんか、楽観的に考えられるようになったんですね。「こっちがいいと思うんですけど、あれ?でもこっちかなあ〜」なんてことも全然ありますけど(笑)。その、優柔不断は…奥が深いですね☆
――そうなんですよ、わたしなんて一部分どころか、なんにも直ってなくて。
★でも、直んなくてもいいんじゃないですか。ばんばさんも真面目なんですよ。
――おぉー。先輩からのお許しが。
★あ、『楽観的な優柔不断』てどうですか?イチゴパフェとチョコパフェとどっちにしようかな?うーどっちにしようかな、どっちにしようかな、まいっかどっちでも☆
――食べらんないじゃないですか!しかも、結局、最後になっても例えがファミレスのメニューレベルっていうね。でもまあ、優柔不断の基本はファミレスのメニューに詰まってますよね。メニュー選びで煮詰まって悲しくならないように!明るく!
★そうです明るく!わたしネガティブだネガティブだって言われるので、『明るいネガティブ』を目指そうと思ってるんです。ネガティブって後ろ向きな考えという意味だけど「暗い人」って意味じゃないじゃないですか。だから、明るいネガティブだったら別にいいのかなぁ〜と。
――なにか、この、何かを解決したような解決してないような!とりあえず横に置いたような楽観さは伝わってきますね。
★深く考えすぎないほうがいいんですかね〜。
――深く考えはじめたら、途中で辞めちゃう☆ってどうですか?明るいネガティブとか、これかなり途中で止めた感じしますよね。今日はおしまいッ♪みたいな。明るいネガティブってなんだかわからないけど、そんなイメージで!(ここは自信たっぷりで!)
★なんとな〜くでね♪
米山香織(よねやまかおり)
1981 年神奈川県生まれ。1999年JWP女子プロレスからデビュー後、数々のタイトルを取得し、その後フリーに。2012年にはタイ初の女子プロレス団体「我闘雲舞(ガトームーブ)」の旗揚げに参加する。現在3団体にレギュラー参戦する人気者。男子レスラー円華選手といっしょに「よねやまどか」という音楽ユニットを組み、あちこちでゲリラライブを開催中。
米山香織公式サイト
http://www.kaori-yoneyama.com/