その昔昔、六本木に小森のおばちゃまのお店があった。
大きなプロジェクターで映画が流れている、パウンドケーキがおすすめのカフェだった。
六本木で、わざわざお皿に乗ったパウンドケーキというのが新鮮だった。
ひんやりとしていて、しっとりとしていて、家に持って帰りたいなと思った記憶がある。
お中元なんかで届く箱詰めの薄切りのパウンドケーキの、何倍も美味しかった。
という小学生時分のできごと。
大人になって、お菓子をつくるようになって
ケーキらしきものは幾つか焼いたけれど
「家で食べるんだからこんなもんでいいや」
という生地しか焼けたことがない。大好きなパウンドケーキも然り。
ある日、お店に出してみたら、味に厳しいオーナーにダメ出しされた。
お皿に乗せて生クリームを添えても絵にならないと言われた。
先生に「それでもパウンドケーキが出したいんです」と泣きついたら、「フランス菓子でパウンドケーキの外側を砂糖でコーティングしたものがあるわよ」と教えてくれた。
『ウイークエンドシトロン』
週末前に作っておいて、お休みがきたら食べましょうっていう素敵なお菓子。
手順を聞いて習ってみたら、今までのレシピより1つも2つも手間が多い。ああ、やっぱり、何倍も美味しいものは手間の数も多いのだ。スッと腑に落ちて、安心した。
6月のレッスンをリクエストにしたわたしのため、オーブンを待つお茶の時間に出してくださった、今月の課題のmariage(フロマージュブランとスポンジの白いケーキ)。
ブランの層も、スポンジの層も、ふんわ〜〜りした幸せな口当たりです。
レッスンはできなかったけれど、味の勉強だけはできちゃった。
先生、ありがとうございました。
-----