その椅子のスプリングは上等ではなかったし、シートに綻びもあった。窮屈でもあった。
誰かに座れと言われた椅子ではないけれど、みんなが打ち捨てた見向きもしない椅子だった。椅子から見える景色は絶景とは言えず、でもこの椅子だからこそ見える気付く、小さくても良い景色もあった。と思う。
長らく付き合った間柄だから椅子のほうも分かってくれるはず。わたしなりには育てておいたから、当初より尻心地が良い場所になってるはずだし。
行き先は決まっていない。
というか、人から見たところでわたしが何処に移動したか見えるはずもない。断捨離や引越しやLINEリストの整理整頓みたいに、パーっと気が晴れるものでもなし。
少なくとも次は、自分で座るよう指示しない場所にしなくては。いつも余ってる席でいいやと思ってきたけれど、座りたい場所を探さないとね。